こんにちはフカセです(`・ω・´)ゞ
AGAの知識を記事にしてみなさんにお伝えするとなると、
これで本当にわかりやすく伝わっているのか・・・!?
と書いている途中で早速不安になっています^^;
「ここがわかりづらかった!」
などのご意見はこれからの記事の作製の参考にさせて頂きたいので、
どんどんコメントしてもらえると嬉しいです!
さて、今回はAGAにおけるヘアサイクルの短縮について、
そのメカニズムについて話したいと思います!
本記事で主に参考にさせて頂いた論文は、化粧品やシャンプーなどでお馴染み、
資生堂のライフサイエンス研究センターの研究者の方が書かれた論文です!
Hibino T, Nishiyama T. Role of TGF-β2 in the human hair cycle. J Dermatol Sci. 2004 Jun,35,9-18
やっぱり髪の毛に関する積極的な研究を行っているのは
製薬企業よりも化粧品業界の企業なんだな、って思いました。
なお、本記事は別記事(「AGAとは何か?薄毛発症メカニズムの全体像を考察!」)を読んでからだとスムーズだと思いますので、まだ読んでいない方はまず先にこちらをどうぞ!
それでは早速いってみましょー!
AGA患者のヘアサイクルの乱れ
まずは復習ですが、人の毛髪周期は
・ anagen: 成長期
・ catagen: 退行期
・ telogen: 休止期
の主に3つにわかれています。
AGAの原因として最もよく知られている成分はジヒドロテストステロン(DHT)であり、
プロペシアなどの有効成分としてフィナステリドを含むAGA治療薬はこのDHTの生成を抑制する薬であるということは他記事でもお話しました。
また、これも復習ですがDHTによってヘアサイクルにおける「成長期」が短縮し、その結果薄毛となります。
下図のように、AGA患者の場合本来数年ある「成長期」が数ヶ月で終わり、
「退行期」に入ってしまうわけですね。
(http://www.aga-news.jp/secure/about_aga/index.xhtmlより引用)
そこで本記事ではDHTが生成したその先。
つまり、どのような流れでヘアサイクルの短縮を招くのか。
についてちょっと詳しめにお話ししたいと思います(`・ω・´)ゞ
ヘアサイクル短縮の鍵はTGF-β2
DHTが生成するとどのようなメカニズムで薄毛の進行に繋がるのか?
DHTの動きから順に見ていきましょう。
DHTは、毛乳頭細胞に存在するアンドロゲンレセプターという種々の男性ホルモンと結合するタンパク質に結合します。
アンドロゲンレセプターにDHTが結合すると下図のように、
元々は細胞中の細胞質という領域に存在していたアンドロゲンレセプターが、
DNAが存在している細胞核と呼ばれる細胞の中心部へと移行します。
(下図は他にも色々書かれていますがここでは気にしなくて大丈夫です。)
(図中のAR=アンドロゲンレセプター、cytoplasm=細胞質、nucleus=核)
(この図はDr.Marianne D Sadarにより、(Meehan KL, Sadar MD. Androgens and androgen receptor in prostate and ovarian malignancies. Front Biosci. 2003 May 1;8:d780-800)を元に作製されたものです。)
そこでアンドロゲンレセプターがDNAに結合し、
TGF-β2という分子の生成が盛んになるように調節が行われます。
退行期の進行は細胞死が原因?
このようにして発現が促進されたTGF-β2なんですが、コイツがさらにまた他の受容体に結合し、
そこからアポトーシス(細胞死)を引き起こすシグナル伝達経路が活性化されます。
アポトーシスは“細胞の自殺”とも呼ばれ、本来は例えばDNAの複製に失敗したなど、
何か不具合のある細胞が全体としての存続のために自ら死ぬ行為です。
今回はTGF-β2によって、
毛乳頭細胞が“不必要”の烙印を押され、
自ら死ぬことを選んでしまったというわけです。。。
なんとも悲しいですね・・・(´・ω・`)
本体である僕はまだ毛が必要だと思っているのに・・・(´・ω・`)
そしてこのTGF-β2が髪の毛の「成長期」の短縮、
言い換えると「退行期」への進行
の原因として有力視されております。
実際、TGF-β2が高い濃度で存在するほど
毛髪の成長が抑制されることは他の研究でも明らかにされています!
Soma T, Tsuji Y, Hibino T, Involvement of transforming growth factor-beta2 in catagen induction during the human hair cycle. J Invest Dermatol. 2002;118:993-7
TGF-β2の阻害による毛髪の成長
このTGF-β2の作用を更に念入りに確かめるために、
これに結合して機能を阻害する抗体を用いた実験も行われました。
この抗体の存在下では、抗体がTGF-β2の受容体への結合を邪魔することで
毛髪の「退行期」への進行が遅れ、結果として毛髪の成長が顕著に刺激されました。
これより、TGF-β2こそが毛髪の成長を妨げている正体であることがより確実となり、
TGF-β2の機能を阻害する成分があれば育毛に役立つのにな~ということになりました。
アジサイのエキスに育毛効果あり?
このTGF-β2の機能を阻害する成分として可能性が見いだされたのが、
結構身近な花であるアジサイの抽出液です。
ある研究では、「成長期」の終盤にアジサイエキスを塗ったところ
「退行期」への進行を遅らすことができた、と報告されています。
Tsuji Y, et al., A potential suppressor of TGF-beta delays catagen progression in hair follicles. J Invest Dermatol Symp Proc. 2003;8:65-8
しかし、現在のところこのアジサイエキスを用いた育毛剤というものは残念ながらないようです。
その原因をフカセなりに推測してみたのですが・・・。
ひょっとしたらアジサイに毒があることが原因かもしれません。
アジサイにはかの有名な青酸カリに似たタイプの毒があり、食べるとダメみたいです!
実際、料理の飾りとして用いられていたアジサイの葉っぱを食べて食中毒になったという事件も国内で発生しており、厚生労働省も注意喚起をしているので甘くみたらいけませんっ!!
このような毒となる成分がある以上、AGA治療に役立つ有効成分を特定し、
それ以外の毒の成分などをちゃんと除去する精製の過程が必要となり、
かなり使うのが面倒になるのが原因では?
と想像しております(o・ω・o)
でも実際これは内服薬にしようとした場合には問題となりますが、
頭皮に塗る外用タイプだったら今回の毒は働かないので大丈夫なハズなんですけどね^^;
(アジサイの毒は胃酸で加水分解されることで体に害をなすようです。)
これはあくまで想像なんで参考程度にとどめておいて下さい^^;
まとめ
ヘアサイクルが短縮する流れをまとめるとこんな感じになります。
テストステロンのDHTへの変換
DHTのアンドロゲンレセプターへの結合
TGF-β2の発現増加
TGF-β2による細胞死経路の活性化
ヘアサイクルの短縮
AGAの根本的な原因としてはDHTばかりが注目されていますが、
その下流にあるTGF-β2というものも同じくらい重要なんだ、ということがわかっていただけたかと思います(`・ω・´)ゞ
アジサイからの有効成分特定&実用化されるといいですね(*´ω`*)!!
追記) 記事作成後になんとなく調べていたらアジサイの成分を用いたものではありませんが、他にもTGF-βの作用を抑制する成分を見つけました!また、こちらは既に薬用育毛剤として販売されていましたので記事にしてみました(`・ω・´)ゞ
→サクセスバイタルチャージ薬用育毛剤の効果と育毛メカニズム
基本的なことかもしれませんが、ヘアサイクル正常化のために何をするかが知りたいです。
他の記事にありますか?
結局のところ読者が知りたいのは、「なぜ禿げるのか?」でなく「何をすればいいのか」だからです。
にゃーたさん
コメントありがとうございます。
ちょっとわかりにくいですが本記事の一番下にリンクを貼ってあります「サクセスバイタルチャージ薬用育毛剤の効果と育毛メカニズムは!?」では、本記事で扱ったTGF-βの作用を抑制すると期待される育毛剤をご紹介しております。
TGF-βの阻害に限らず、ヘアサイクル正常化のために良いと考えている育毛剤等は最強育毛ストラテジーの方に記載しておりますので、そちらもご覧いただければ具体的に何をすればよいかがわかると思います!
質問です!
記事ではTGF-β2がAGAでは働いているように記載されていますが、他のサイトや論文ではTGF-β1がAGAではキーファクターであると記載されているものもあります。
個人的にはどちらも関係するのかなと勘がていますが、結局どちらなのでしょうか?
高橋さん
コメントありがとうございます!
僕も高橋さんと同じくTGF-β1、β2共にAGAのキーファクターだと考えています。
本記事ではTGF-β2に着目してまとめましたが、これは単に参考にした論文がTGF-β1ではなくβ2について調べたものであったためです。
β1とβ2のアミノ酸配列だったり機能がどのくらい似通っている・・・というところまでは現状調べきれていないのですが、β1、β2のいずれについても
AGA関連の論文では見かけますので両方とも関係しているという認識でよいかと思います!