こんにちはフカセでございます(`・ω・´)ゞ
Nori56さんから下のようなご質問を頂きました。

お世話になっております。
最近このHPを知り、非常に役に立つ情報が多く有難く拝見させて頂いています。
私は現在アラフォーの薄毛で、AGA治療を自分なりに9か月以上続けていますが頭頂部が薄く(赤身がかっている)満足できる結果がでていません。
(ミノタブ5mg デュタステリド0.5mg ノコギリヤシ・亜鉛サプリメント)
※3か月前からチャップアップとそのシャンプーを利用開始するも特に効果なし
そこでこのHPでお勧めしている、最強ストラテジーにのっとりチャップアップとサプリをやめ、Deeper3dとボストン、ケトコロストシャンプーを追加投入して回復を試みようと思っているのですが一つ質問があります。
私には軽い睡眠障害があり、寝つきが悪いという事がよくあります。
そこで、毎日ではないのですが睡眠導入剤をよく利用しています。
この睡眠導入剤とAGA治療薬というものの相性はどうなのでしょうか?
一番いいのはその障害を取り除く事だとは思うのですが。。。
以上よろしくお願い致します。
Nori56さんご質問ありがとうございます!
ご質問は睡眠導入剤とAGA治療薬の相性についてですが、
折角なので睡眠導入剤に限らず薬全般との飲み合わせについて考察してみたいと思います(`・ω・´)ゞ
総合的に扱った結果、ちょっと長めの記事になってしまいました^^;
それでは早速いってみましょー!
目次
薬の飲み合わせが悪いとどうなるか?
さて、まず薬の飲み合わせが悪いとどうなるのかという話から入っていきましょう。
薬の飲み合わせが悪いと主作用が強まったり弱まったりします。
また、副作用も強く出てしまうこともあります。
これによって身体にとって不都合なことが起きてしまうことがあります。
極端な場合だと薬の飲み合わせが悪いことによる死亡も有り得ます。
その一つが1993年に起こったソリブジン事件です。
抗ウイルス薬であるソリブジンとフルオラシル系の抗がん剤を併用した患者さん10人以上が亡くなりました。
これは、ソリブジンが抗がん剤の代謝を阻害してしまったことが原因でした。
薬物相互作用にもっと注意しなければいけないという意識が高まったのも、この事件がキッカケです。
それでは薬物相互作用は一体どのようなメカニズムで起こるのかを次に見ていきましょう。
薬物相互作用
ひとくちに薬物相互作用といってもそのメカニズムは様々です。
まず、大別して薬力学的相互作用と薬物動態学的相互作用の2つに分けられます。
薬力学的相互作用は同じ薬理作用、あるいは相反する薬理作用をもつ薬を併用した場合に起こります。
一方、薬物動態学的相互作用は、医薬品の吸収、分布、代謝、排泄といった体内動態に影響を与えてしまうような相互作用です。
この中でも最も重要なのは“代謝”です。
ですので、ここでも薬物動態学的相互作用については代謝に焦点を当てたいと思います。
それでは、それぞれについてもう少し詳しく見てみましょう。
薬力学的相互作用
まず、効果が強く出るケースを考えてみます。
例えば、血圧を下げる薬Aを飲んでいるとします。
そこに更に血圧を下げる薬Bを飲んでしまった場合、血圧低下の効果が強くなります。
つまり、主作用が同じ薬を併用すると効果が強く現れすぎることがあるということですね。
これは当たり前ですよね^^;
まあ間違えて主作用が同じものを重ねて飲んでしまったということはあまりないと思います。
注意しなければいけないのは以下のケースです。
血圧を下げる薬Aを飲んでいるとき、
主作用が異なる薬Cも飲んでいたとします。
しかし、その薬Cに血圧を下げるという副作用があった場合、気づかないうちに血圧が下がりすぎる恐れがあります。
こちらの方は副作用まで十分に見ておかないといけないので注意していないと起こってしまう可能性がありそうですね。
続いて、効果が弱まってしまうメカニズムを見てみましょう。
例えば、血圧を下げる薬と血圧を上げる薬を飲んだ場合に効果が相殺されます。
こちらについてもさすがに主作用が相反する医薬品を飲む方はなかなかいないと思いますが^^;
もうおわかりかと思いますが注意すべきは以下の例ですね。
血圧を下げる薬Aを飲んでいるとき、
主作用が異なる薬Cも飲んでいる。
しかし、薬Cの副作用が血圧を上げる、というような場合です。
薬Cの副作用により薬Aの主作用が弱められ、十分な効果が得られなくなる可能性があります。
以上が薬力学的相互作用の例でした。
薬物動態学的相互作用
上でも述べましたが、薬物動態学的相互作用の主役は代謝です。
そして薬物の代謝を担うメインの酵素がシトクロームP450というものです。
Cytochrome P450なのでCYPと表記されることが多いです。
一口にCYPと言っても、ヒトでは大体50種類ぐらいのCYPが存在してます。
そのため、CYP3A4などと細かい種類がCYPの後に続き記載されます。
(ちなみにCYP以外の酵素でも薬物相互作用が起こる可能性はあるのですが、頻度としてはCYPにくらべて断然低いです。)
代謝に影響を与えるメカニズムの一つは、代謝酵素の阻害です。
ちなみに競合阻害、不可逆的阻害、非特異的阻害の3パターンが有り得ます。
この中でも一番頻度が高いのが競合阻害です。
これは、併用した薬を代謝する酵素が同じ場合に起こります。
1種類の酵素で複数の薬を代謝しないといけなくなるので、代謝のスピードが落ちてしまうわけですね。
その結果、薬の血中濃度が中々下がらなくなり効果が強く出てしまうことがあります。
また、逆に代謝を促進させてしまう場合もあります。
これは、薬物代謝酵素が増加することにより引き起こされます。
この現象は「酵素誘導」と呼ばれています。
酵素誘導が起こって併用薬の代謝が亢進されてしまうと血中濃度がすぐ下ってしまいます。
その結果として併用薬の効果が薄れてしまうことがあります。
薬物相互作用の有無をどう調べるか?
以上、薬物相互作用のメカニズムについて見てきましたが。
さて、自分で薬の飲み合わせに問題ないかを確認したいときにはどうすればよいのでしょうか?
(もちろん、医者に訊くことが可能ならそうするのが一番だと思います。)
自分で確認したいときは使用する医薬品の添付文書を見てみましょう。
まず、添付文書の冒頭に【警告】あるいは【禁忌】という欄があります。
もし重篤な薬物相互作用が確認されている場合はこの欄に表記されています。
なお、【禁忌】に記載されている薬は併用不可ですが、【警告】の場合は注意が必要だが併用可能なものもあります。
続いて【薬物相互作用】という欄を確認しましょう。
そこを見てみると、相互作用が確認されている薬剤があるかどうかがわかります。
具体的な成分名が書かれている場合もありますし、「〇〇系」などとという分類で記載されていることもあります。
最後に、【代謝】の欄も確認してみましょう。
ここでは、薬がどの代謝酵素によって代謝されるかが記載されています。
ここを見て、使用したい薬の代謝酵素をひとつずつ確認してみてください。
そして併用したい医薬品も同じ代謝酵素で代謝されると書かれていた場合は、併用しても問題がないか念のためにお医者さんに訊いてみた方がよいです。
それでは、ここからは以上の流れで添付文書を確認し、具体的なAGA治療薬の飲み合わせについて見ていきましょう。
フィナステリドの飲み合わせ
フィナステリドに関しては、MSD社のプロペシアの添付文書を参考にしてみます。
(以下の画像の出典はプロペシアの添付文書です。)
まず、禁忌の欄から見てみましょう。
特に薬物相互作用についての記載はありません。
なので、絶対にフィナステリドと併用してはいけない薬剤はなさそうだとわかります。
ただ、併用する際に注意しておいた方がいいものもあるかもしれないので、次に薬物相互作用の欄を確認してみます。
画像の通り、特に他の医薬品との薬物相互作用は認められませんでした。
ですので、とりあえずこの欄はスルーしておきます。
続いて代謝の欄を見てみましょう。
(1)を見ると、フィナステリドはCYP3A4が関与して代謝されているようであると記載されています。
また、(2)の方を見るとCYP2C19を阻害する能力があるということがわかります。
ですので、フィナステリドと他の医薬品を併用する際は、
CYP3A4あるいはCYP2C19で代謝されるものではないか?
それらの酵素に何らかの影響を与えるものではないか?
ということを添付文書を見て確認した方がよい、ということになります。
デュタステリドの飲み合わせ
続いてデュタステリドについても見てみましょう。
こちらはグラクソ・スミスクライン社のアボダート(Avodart)を参考にしてみます。
(以下の画像の出典はアボダートの添付文書です。)
まずは、【禁忌】の欄から。
デュタステリドに関しても特に薬物相互作用についてのコメントはありませんね。
ですので、フィナステリドと同様に絶対に併用してはいけない薬というものはなさそうです。
続いて薬物相互作用の欄です。
デュタステリドの場合は(1)に注意すべき点が記載されていますね。
ケトコナゾールがデュタステリドを代謝するCYP3A4を阻害してしまうようです。
それではケトコナゾールを含むケトコロストシャンプーと併用するのはマズいのでは?
と思うかもしれませんが、この点は心配いらないと思われます。
というのも、ここで想定されているのは内服タイプのケトコナゾールだからです。
ケトコロストシャンプーに含まれるケトコナゾールは、外用タイプですので血中にまで移行することは基本的にありません。
ですので、デュタステリドとケトコロストシャンプーの併用も問題ないと考えられます。
続いて代謝の欄を見てみましょう。
デュタステリドについてはCYP3A4とCYP3A5によって代謝されるようです。
CYP3A4についてはフィナステリドと同様ですが、CYP3A5という点は異なりますね。
ミノキシジルの飲み合わせ
最後にミノキシジルタブレットです。
ミノキシジルタブレットについては日本では承認されていないので、海外で承認されているものを見てみました。
具体的には、Pfizer社のロニテン(LONITEN)を参考にしています。
(以下の画像の出典はLONITENの添付文書です。)
まず、【CONTRAINDICATIONS(禁忌)】の欄から。
特に薬物相互作用については記載されていないのでスルーします。
次にDrug-Drug Interactions(薬物相互作用)の欄です。
こちらには服用に際して注意すべき薬が記載されていますね。
ミノキシジルはUDP-グルクロン酸転移酵素によって代謝されます。
そのため、この酵素を強く阻害するような薬との併用は注意する必要があります。
例としては、尿酸排泄促進薬のプロベネシドや、抗てんかん薬のバルプロ酸、エイズ治療薬のアタザナビルが挙げられています。
これは上で説明した薬物動態学的相互作用に相当しますね。
続いて、グアネチジン(Guanethidine)という薬剤を服用している場合にも注意する必要があると記載されています。
グアネチジンは血圧を下げる作用があります。
一方、ミノキシジルも元々は血圧を下げる薬であるため同様の効果を持ちます。
そのため、これらを併用すると血圧を下げすぎる恐れがあります。
こちらは上で説明した薬力学的相互作用ですね。
ロニテンの添付文書には記載されてはいませんでしたが、グアネチジン以外の血圧を下げる薬を飲んでいる方も気をつける必要があります。
最後にMetabolism(代謝)の欄です。
こちらについては薬物相互作用の欄と同じ注意点が書かれています。
最後に(睡眠導入剤との飲み合わせについて)
以上、薬の飲み合わせ全般についてでした!
添付文書を見て、自分で回避できる危険は回避しましょう(`・ω・´)ゞ
最後になりましたが、ご質問にありました睡眠導入剤との飲み合わせについてコメントしておきます。
上で見てきたとおりAGA治療薬の禁忌や薬物相互作用の欄に睡眠導入剤は見当たりません。
なので、重篤な副作用が現れてしまうというようなものはないと思います。
しかし、AGA治療薬と代謝酵素が同一のものに関しては念のため注意しておいた方がいいです。
睡眠導入剤については色々な種類があるので、相性のいいものも悪いものもあるかもしれません。
ですので、Nori56さんが実際にご使用されている睡眠導入剤の添付文書を見てみて、薬物相互作用の欄と代謝酵素の欄をチェックしてみて頂ければと思います(`・ω・´)ゞ
以上になります、Nori56さんご質問ありがとうございました!