こんにちはフカセでございます(`・ω・´)ゞ
こちらの記事のコメントで、ミノキシ汁さんから以下のようなご質問がありました。

フィンペシアからデュタステリド(ベルトリド)に乗り換えようとしているのですが、使用を切り替える際「血中にフィナステリドの成分が残っていると、急性冠動脈症候群と呼ばれる血栓が作られてしまう症状が発生するリスクが、フィナステリドやデュタステリドを普通に服用している際の3倍にもなってしまう」と聞いたことがあります。これを無視する訳ではないですが、仮に上の報告を信じるとして、どれくらい服用切り替えの期間をあければ良いと思いますか?フカセさんの知っている中で実際にフィナからデュタに切り替えた方とかおられましたらアドバイスお願いします。
長文ですみませんが、これからもよろしくお願いします。
もとの記事の方でも軽く回答したのですが、ちょっとこの副作用について気になったので論文を探してみました!
その論文のデータも踏まえてフィナステリドとデュタステリドの併用や切り替え時の注意点などについて考察していきたいと思います。
それではいってみましょー!
目次
フィナステリドとデュタステリドの併用で副作用の危険性が上がる?
ご質問の中にもあったフィナステリドとデュタステリドを併用した際の副作用について、元データとなる論文を探しました。
すると、急性冠症候群の危険性が向上するという報告がされている以下の論文がヒットしました。
J Endocrinol Invest. 2015 Jul;38(7):799-805.
そこで、今回はこの論文の結果も見つつ考えていこうと思います。
ただ、そもそも急性冠症候群ってなんやねん?
という方がほとんどだと思いますし、
僕もそんな詳しいわけではないのでまずはそちらから見てみましょう(`・ω・´)ゞ
急性冠症候群とは?
急性冠症候群(Acute Coronary Syndrome)とは、冠動脈の閉塞により引き起こされる病気です。
一口に急性冠症候群といっても種類はいくつかあります。
ただ、そのどれもが血栓ができて血管が詰まって血流が悪くなる、あるいはその血管の血流が完全に止まってしまうことが原因で引き起こされるようです。
心筋梗塞なんかが一番有名な急性冠症候群の1つだと思われます。
心筋梗塞っていうと突然死に繋がりそうなイメージですよね・・・。
実際、僕の中学生の時の友人は心筋梗塞で父親を亡くしていたので結構怖い印象があります。。。
そんな怖い副作用が起こりやすくなるのは一大事だ!
ということで具体的にどの程度起こりやすくなるのかを見てみました。
急性冠症候群がどれだけ起こりやすくなるか?
論文中ではオッズ比(Odds ratio)で起こりやすさが表現されていました。
オッズ比とはある事象の起こりやすさを表す尺度になります。
ちなみに生命科学分野だけでなくギャンブルなんかでも使われる尺度ですね笑
この論文では、まずフィナステリドやデュタステリドで前立腺肥大症の治療を行なっていて急性冠症候群の起こった1834のケースを抽出しました。
そしてそれらと急性冠症候群の起こらなかった7330のケースを比較対象とし、分析を行なっています。
そして解析を行なったところ、
フィナステリドとデュタステリドを併用すると、急性冠症候群が3.47倍起こりやすいという結果が得られました!
なお、3.47倍というのはフィナとデュタのいずれも使用していない場合と比較しての値です。
また、フィナステリドとデュタステリドをそれぞれ単体で用いた場合は、
いずれについても単剤では急性冠症候群のリスクは特に上昇しないという結果が出ました。
論文のデータの信憑性と解釈
さて、上記の論文のデータをそのまま信用していいか?
というとちょっと微妙な面もあります。
というのも、解析の対象となった急性冠症候群を発症した患者のサンプル数が不十分であるという疑惑があるためです。
なんと実際に解析されているサンプル数はたったの6人だったんですよΣ(・∀・;)!
そのため、今回の3.47倍という数値の信憑性には疑問の余地がありそうです。
また、急性冠症候群を発症した方達の平均年齢は約73歳と高齢です。
ですので、AGA治療を一般的に行っている方が多い年齢(20~50代)の話ではないということにも注意です。
では以上のことを踏まえると、やっぱフィナステリドとデュタステリドは併用してもOK何じゃないの?
となりそうですが、そこにも懸念はあります。
そもそもフィナとデュタの併用は逆効果?
Norwich Medical School所属のDr. Yoon K. Loke氏は、
「フィナステリドとデュタステリドの併用投与により逆に脱毛が促進されてしまったという事例もあるため併用は推奨できない」
と述べています。
ちょっとLoke氏の発言中にある“事例”の具体的なソースが見つからなかったのですが、そのような可能性は否定できません。
また、そもそも論としてフィナステリドやデュタステリドは単体で用いても5α-リダクターゼを阻害するという作用には遜色ありません。
特にデュタステリドでは単体でも十分にジヒドロテストステロンの抑制能がありますので、AGA治療には単剤でも効果ありと言えます。
なので、フィナとデュタを併用で用いる必要性は正直見当たりません。
そんなわけで、フィナステリドとデュタステリドの服用は一見薄毛の進行をより強く抑制できるように思えますが、
実はその逆の結果となってしまう可能性があったり、
そもそも大してAGA治療に有効というわけでもないのでやめた方がよいです!
フィナ→デュタの切り替えはどうすべきか?
フィナステリドからデュタステリドに切り替える場合、
上で見てきたようなフィナとデュタ併用時の悪影響が現れるのではないか、
とやっぱり気になる方もいるかと思います。
そうした場合にどうすればこの可能性を排除できるかについてですが、
悪影響はあくまで“併用時”に現れたということなので、
フィナステリドが血中から排除された後であればデュタステリドを飲み始めても問題はないと考えられます。
その逆も然りですね。
(画像はプロペシア(MSD)添付文書より引用)
上図のようにフィナステリド(プロペシア)は1 mg服用時でも24時間経てばほぼ100%血中からなくなります。
ですので、前回のフィナステリド服用から24時間以上経っているのであれば
デュタステリドを服用しても特に懸念すべきことはないのではと思います。
まとめ
以上、まとめますと
フィナステリドとデュタステリド併用時の急性冠症候群の発症確率上昇説はやや信憑性が低い(が無視はできない)。
急性冠症候群が起こっている年齢層は70歳以上と高齢のため、20~50代の人であればあまり気にしなくてよいかもしれない。
フィナステリドとデュタステリドの併用は特にAGA治療効果が特別高まるわけでもないので片方のみの服用にする!
ということになります。
なお、サンプル数的には信憑性がやや不十分であるという懸念はありますが、
とはいえ急性冠症候群が起こりやすくなったという結果自体はないがしろにはできないので、一応意識しておいた方がいいですね!
そんなわけで、あまりフィナとデュタを併用しようと思われる方は少ないと思いますが、併用はしないようにしましょう!
そして恐らく数時間フィナとデュタが血中に共存したところで悪影響は現れないと思いますが、
心配性の方はちゃんと血中からフィナステリドが排除されるのに十分な時間が経過した後にデュタステリドに切り替えるなどの工夫をしてみてはと思います(`・ω・´)ゞ
以上になります、ミノキシ汁さんご質問ありがとうございました!
生え際にはフィナステリド とデュタステリドどちらが効果ありますか?1型と2型生え際に多いのは1型ですか?
デュタステリドはプロペシアより効かないなんてこともたまに聞きますが、そう
いうこともありますか?
よろしくお願いします。
マコトさん
コメントありがとうございます。
生え際に多いのは2型の5αリダクターゼです。
フィナステリドは2型、デュタステリドは1型と2型に対して効果があると言われているのでいずれでも生え際に効くと考えられます。
フィナステリドとデュタステリドについての比較はコチラの記事をご覧いただければと思います。