こんにちはフカセです(`・ω・´)ゞ
これから使用する、あるいは現在使用しているという方もいるであろうプロペシアやフィンペシアといったAGA治療薬の有効成分である
フィナステリド。
本記事では少し発展的な内容なのですが、このフィナステリドの作用機構を掘り下げていきます!
つまり、フィナステリドが体内でどんなことをして効果を発揮しているか、ということについて詳しくお話しします。
正直、AGA治療をするにあたって絶対に必要な知識か?と言われると微妙なところですが、ある理由でこの記事を作成することに決めました。
やや専門的な話が多く難しいかもしれませんが、専門外の方にもわかりやすくなるよう努力したのでこれを読んでフィナステリドに対する理解を深めてもらえれば幸いです(`・ω・´)ゞ
多くのサイトの怪しい説明文
僕がこのブログを立ち上げようと思った理由の1つに、間違った情報を布教しているブログが多すぎるってことがありました。
これは、全然専門に薬学などを学んだことのない人が薬の効果まで説明しようとした結果だと思っています。(もちろん悪意のある間違った情報もたくさんありますが、こちらはその限りじゃありません。)
例えばフィナステリドの効果についての記事なんかも、どこか他のサイトの記事をコピーしてちょっと表現を変更したみたいなサイトがほとんどです。
その結果、ちゃんと薬の作用を理解していない人が書いているとちょっと不自然な説明になっていることが多々あります(´・ω・`)
特に、専門の人は絶対こんな用語とか表現はしないんだけどな・・・という例が多いですね。。
つまり、AGA治療薬の効果の説明文を見るだけで、書いている人にこの分野の知識があるかどうかわかっちゃいます。
なので、僕はAGA治療を開始した初期のころはAGA治療薬の説明文を見て、信頼できそうなサイトかどうかというのを判断していました。
もちろん治療薬の説明文はそんなにおかしくなくても他の記事がおかしいブログは多いので、この基準はあくまで「足きり」の意味で使っていました笑
例えるならこういった治療薬の説明というのは、料理屋で言うと一番店の実力が表れる品というイメージです笑
というわけで、フィナステリドの効果と作用メカニズムについてきちんと理解した記事を書くことで、「他ブログとは一味違うんだぜ」ということを示したいってことなのです(`・ω・´)ゞ
当店自慢の一品をどうぞお召し上がりください笑
フィナステリドの効果
まずは復習になりますが、フィナステリドの効果は
テストステロンが5α-リダクターゼⅡ型によりDHTに変換されるのを防ぐ
ということでしたね。
下のような反応を阻害するということです。
そしてこの程度の情報は他ブログにも腐るほど書かれているので
記事作成現在(2016年5月)調べた限りどこのサイトにも書かれていない
フィナステリドの作用機序まで掘り下げたいと思ったわけです笑
ちなみに、上の反応ですが本当はNADPHという補酵素も反応に関わっています。(これも他サイトではまず言及されているところを見ない情報だと思います。)
本記事の参考論文
今回参考にした論文は、化学界の超一流ジャーナルであるJACSに掲載されています。
参考論文(Herbert G. et al., Mechanism-Based Inhibition of Human Steroid 5α-Reductase by Finasteride: Enzyme-Catalyzed Formation of NADP-Dihydrofinasteride, a Potent Bisubstrate Analog Inhibitor. J.Am.Chem.Soc. 1996, 118, 2359-2365)
(この論文は作用機序というより、酵素上での化学的な反応機構を示した論文です)
余談ですがこのJACSという雑誌がどのぐらい一流かというと、
マンガ雑誌界で例えるなら「週刊少年ジャンプ」的なポジションになるかなと思います(o・ω・o)異論は認めます笑
まあとにかく化学分野では非常に影響力の強い雑誌で、
ここにバンバン論文を掲載させてる研究室は、
東大の中でもレベルの高い研究をしていると一目置かれます。
結局のところ何が言いたかったかというと、
JACSに掲載されるということは、フィナステリドの酵素上での反応は
世界的にも重要視されていてインパクトがあったんだなー、
ということです笑
フィナステリドの作用機序
それではいよいよ作用メカニズムの話に入っていきましょう!
フィナステリドがどのように効果を発揮しているのか?
それを考える手がかりは、記事冒頭に載せた分子構造にあります。
フィナステリドの構造って何か他の分子の構造に似ていると思いませんか?
AGAに関する知識をよく持っていて勘のいい方は気付くかもしれませんね^^
・
・
・
・
・
・
はい。
実はこれ、男性ホルモンであるテストステロンと構造がそっくりなんです!
2つの構造を比較してみると下のようになります。
赤の点線で囲んだ部分が異なる部分ですね。
いくつか異なるところがあるのですが、
基本骨格が完全に一致しています。
(この基本骨格はステロイド骨格と呼ばれ、種々のホルモンやコレステロールなどが同様の構造を持ちます。)
つまり、フィナステリドはテストステロンを模倣した構造をしている
と見ることができます!
この事実と、
フィナステリドはテストステロンがDHTへと5α-リダクターゼⅡ型によって変換されることを防ぐ
という事実を合わせると、その作用メカニズムが明らかになってきます。
フィナステリドはテストステロンに構造が似ている
5α-リダクターゼⅡ型はフィナステリドをテストステロンと区別できない※
フィナステリドがテストステロンの代わりに還元反応をうける
つまり一言で言うと、
フィナステリドはテストステロンの身代わり
ということになります!!
テストステロンは5α-リダクターゼⅡ型の活性部位と呼ばれる酵素中の基質が結合する部位に結合します。(ここでは酵素=5α-リダクターゼⅡ型、基質=テストステロンです。)その活性部位において、テストステロンを還元してDHTへと変換する反応が起こります。活性部位に結合するかどうかは基質側の分子構造によるため、本来の基質であるテストステロンに似た構造をもつフィナステリドも5α-リダクターゼⅡ型へと結合することになります。しかし、基本構造は同じでも赤の点線で囲んだ部分の構造は異なるため、5α-リダクターゼⅡ型への結合のしやすさも異なります。
よって、下のようなテストステロン→ジヒドロテストステロン(DHT)の反応の代わりに
このようなフィナステリド→ジヒドロフィナステリドの反応が起こるというわけですね。
テストステロンよりもフィナステリドの方が5α-リダクターゼⅡ型に対する結合性が高いため、酵素による反応をうける割合はテストステロン<<<フィナステリドとなります。
その結果、DHTの量が減ったという結果をもたらすわけですね!
フィナステリドの阻害形式は?
5α-リダクターゼⅡ型上の、テストステロンが結合する部位にフィナステリドも結合します。
このように同じ部位に結合して酵素反応を邪魔する阻害形式を専門用語では競合阻害と言います。
酵素の活性部位に結合できるのはどちらかひとつなので競争が起こります。
それが競合阻害と呼ばれる理由です。
ちなみに、活性部位ではないところに結合して阻害を行う場合をアロステリック阻害と言います。(単に非競合阻害とも言う。)
この阻害形式が異なると何が変わってくるのでしょうか?
フィナステリドの効果に対する考察
どの程度のテストステロンがDHTへと変換されてしまうかは、主に以下の4つの要素に依存します。(もちろん他にも影響する要素はありますが)
①テストステロンの濃度
②フィナステリドの濃度
③補酵素(NADPH)の濃度
④5α-リダクターゼⅡ型の濃度
上で、フィナステリドの阻害形式は競合阻害だと言いましたが、それがここに影響してきます。
テストステロンとフィナステリドが競合的に酵素の一つの活性部位に結合しようとするということは、相対的に見てどちらの濃度が高いかが重要になってきます。
注) テストステロンとフィナステリドの活性部位への結合のしやすさは異なりますので、単純に同じ濃度であれば同じ量結合するというわけではありません。
ですので、同じ量のフィナステリドを飲んだとしても、その人のテストステロンの量が多ければDHTへの変換を阻害できる割合は少なくなるし、逆にもともとテストステロンの量が少なければ、DHTの変換を阻止できる割合は高くなるでしょう。
つまり個人差が生まれるというわけですね。
また、フィナステリドが身代わりとして使われてジヒドロフィナステリドに変換されていくと、相対的にフィナステリドの濃度が低くなってきますのでテストステロンを阻害できる割合が減ってきます。加えて、肝臓でも代謝されてどんどんフィナステリドの濃度は減少していきます。
ですので、毎日フィナステリドを飲んで補う必要があるということですね。
言われてみるとすごく当然のことなのですが、案外意識して考える機会というのはないと思うのでちょっとこの点にも触れてみました^^
まとめ
結局一番言いたかったのは
フィナステリドはテストステロンの身代わり(おとり)みたいなものだということでした!
この記事を読んで
薬の働き方のイメージをつかむことができたならば幸いです(`・ω・´)ゞ
追記) フィナステリドを含むプロペシア等医薬品の比較記事も作りましたので、お得にフィナステリドでの治療を行いたい方は参考にしてみてください。
今までみたAGAに関するブログのなかで、最高レベルの知識と説明力のあるブログです。
これから参考にさせて頂きます。
takaさん
コメントありがとうございます。
お褒め頂きありがとうございます!!
ぜひぜひ今後とも参考にしてください(`・ω・´)ゞ
説明とても理解できました。1つ疑問に思ったのですが、AGAでない人がプロペシアを服用すると、男性ホルモンが減り、5aリダクターゼがそれを補おうと活性化して、逆にAGAが発症ということはあり得ますか?
jjrcさん
良いご質問ありがとうございます。
その点については絶対にありえないとは言えないですね。
確かに発生する確率は低いとは思いますが、そのように恒常性を保とうとする性質は本来身体に備わっていますので・・・。
ちなみに5α-リダクターゼの活性化というよりは、単純に5α-リダクターゼの発現量が増える方が起こりやすそうだなと思います。
ちょっと根拠が薄い個人的な考えなのであくまで参考程度でお願いします^^;