こんにちはフカセでございます(`・ω・´)ゞ
こすけさんから以下のようなご質問を頂きました。

初めまして 20代後半でAGAの初期でフィナステリドとミノタブを内服をしているものです。
フィナステリド単体だと前髪がはげる、といった記事を見かけました。フカセさんのHPでもとりあげられていましたが、原因として「フィナステリドによるVEGFへの影響」はあるのでしょうか。
ご質問ありがとうございます!!
なかなか専門的な、かつ鋭いご質問ですね。
フィナステリド単体で用いた際に前髪が薄くなるのは何故か?というて点については以前にこちらの記事(Q&A「フィナステリドで前髪が薄くなる・ハゲが加速するのは何故か?」)で一度考察しました。
この記事を書いた際には、
VEGFへの影響という観点からは考察できていなかったので
今回はその観点で考察してみたいと思います!
ただ、考察に入っていく前に・・・
おそらくこの記事を読んでくださっている方の中にはVEGFってなんぞや?
という方が多いかと思うのでまずはVEGFの話から入りたいと思います!
それではさっそくいってみましょー!
目次
VEGFとは何か?
そもそもVEGFってなんやねん?
ということでまずさらっとVEGFについてまとめます。
VEGFはvascular endothelial growth factorの略称です。
日本語では血管内皮細胞増殖因子という名前になります。
長ったらしいですね^^;
VEGFは血管の形成を促進する機能をもったタンパク質です。
なるほど、血管はヒトには必須なのでなんだかVEGFは重要な分子なような気がしますね!
では、もうちょっとVEGFについて深掘りします。
VEGFはいいやつ?悪いやつ?
ちょっと余談なのですが、
VEGFは薬学を学んでいる人からするとかなりメジャーです。
というのも癌細胞でVEGFは多く産生されており、VEGFをターゲットとした抗がん剤も作られているからです。
ここでは、悪性腫瘍が栄養や酸素を取り込むためにVEGFを使って腫瘍に血管を伸ばさせようとしています。
なので、VEGFに結合してその機能を阻害するような抗体が薬となっています。
こんな背景もあり、VEGFと聞くと
あの悪名高い癌細胞のしもべ・・・という感じの印象がありますΣ(・∀・;)
ただ、VEGFがヒトにとって悪い働きをするのは癌がらみの時だけで、
その他の場合は基本的にいいやつですのでご安心ください!
VEGFと薄毛の関係
じゃあ薄毛との関係においてVEGFはどうなのか、
という話ですが、VEGFが少なくなってしまうと育毛には不利になります。
癌細胞にとって栄養や酸素が必要だったのと同様に、
毛をつくる細胞にとっても栄養や酸素は必要です。
なので、毛母細胞の周りにはできるだけ血管が伸びている状況が望ましいです。
VEGFが減少してしまうと血管を形成する力が衰え、
その結果として毛母細胞に十分な栄養を届けることができなくなります。
ですので、栄養を与えられるぐらいに血管を伸ばすためにもVEGFはある程度必要ということになります。
それではフィナステリドを服用することによって、VEGFの量にどういう影響があるのか?
それを調べた臨床試験の結果について見ていきましょう!
臨床試験の内容
臨床試験についてはこちらの論文を参考にしました。
Pareek G, et al., J Urol. Vol. 169, 20–23, January 2003
この論文では、血尿の症状がある前立腺肥大症を患った方々が対象になっています。
そして、ここでは“患者さんの出血の頻度がフィナステリドの投与によって減少するメカニズムが、
VEGFと微小血管の密度に起因するのではないか”という仮説を検証しています。
なので、フィナステリドをAGA治療のために投与して、VEGFへの影響や薄毛との関連性を調べた論文ではありません。
とはいえ、この論文からフィナステリドのVEGF発現量への影響については重要な情報が得られます。
それではまずは実験の被験者の情報を軽くまとめます。
被験者: 血尿の症状を伴う前立腺肥大症を患った24人の患者
グループ1(12人): フィナステリドの投与なし
グループ2(12人):フィナステリドを6ヶ月以上投与
なお、フィナステリド投与群では毎日5 mgを服用しています。
AGA治療では1 mgの投与が基本ですが、前立腺肥大症に対しての投与なので量が多いですね。
続いて、フィナステリドの影響を評価する項目です。
前立腺における微小血管の密度
前立腺におけるVEGFの発現量
微小血管の密度、VEGFの発現量はともに免疫組織染色(Immunohistochemistry)という手法を用いて評価しています。
※免疫組織染色は組織サンプル中の特定のタンパク質を染色することによって分布やタンパク質の量を定量したりすることが可能な手法です。
臨床試験の結果
(上記論文中Fig.1 を一部改変)
左側のMVDというのが微小血管密度のデータで、
右型のVEGFというのがVEGFの発現量のデータです。
MVDの方(縦軸は左側)は値が大きいほど微小血管の密度が大きいことを示しています。
VEGFの方(縦軸は右側)では値が大きいほどVEGFの発現量が多いことを示しています。
また、図中のControlというのがフィナステリドを投与していないグループ1に相当します。
一方、図中のFinasterideというのがフィナステリドを投与したグループ2を表しています。
図を見て頂くと一目瞭然ですが、
フィナステリドを投与した患者さんでは前立腺の微小血管密度とVEGFの発現量がともに減少していることがわかります。
VEGF減少による前髪への影響は?
上のような結果になったわけですが、
あくまで前立腺における話であるという点は注意しなければいけないと思います。
しかし、(今回は調べられていませんが)仮に他の部位においてもVEGFの発現量が減少しているとしましょう。
その場合は、ご質問中にあるような前頭部における血管密度の低下、そしてそれに伴う薄毛が引き起こされてもおかしくはありません。
なぜ前髪だけなくなるのか・・・?
という点については、頭皮におけるVEGFの発現量変化や血管密度変化を評価してみないとわかりませんが。。。
なお、今回は被験者が血尿の症状がある前立腺肥大症の患者ということでちょっと特殊でした。
そんなわけで健常者として扱われるAGA患者とは少々状況が違うので、AGA患者においても同様のVEGF発現量の減少が起こっているかは断定はできません。
フィナステリドによるVEGF減少はEDの原因になる?
なお、今回のご質問の内容にはありませんでしたが、
フィナステリドによる副作用として報告の多い勃起不全(ED)の症状については上記の論文の結果により説明がつくように思います。
場合によっては、ポストフィナステリド症候群(PFS)と呼ばれ症状が長引いてしまうことがあります。
もしフィナステリドによって男性器の血管の密度が低下してしまった場合、物理的に勃起がしにくくなる可能性はありえます。
また、フィナステリドの服用をやめてもすぐに回復しないという点も、血管が少なくなってしまったためであると考えると納得できてしまいます。
なので、フィナステリドによりEDが起こってしまった場合は血管密度の減少が原因である可能性が高めなのではと思います。
(もちろん精神的な面や、老化の影響などもあるかと思うので絶対ではありませんが)
まとめ
本記事で取り上げた論文では
フィナステリドの服用により微小血管の密度とVEGFの発現量は減少する
という結果となりました。
ただし、注意点が3つあります。
ひとつは、前立腺においての話であるということ。
ふたつめは、被験者が前立腺肥大症患者でありAGA患者ではないこと。
最後が、AGA治療に用いる標準的なフィナステリド容量(1 mg)の5倍である5 mgの服用だったことです。
なので、AGA患者がフィナステリドを1 mg服用した場合に前頭部においてどの程度影響があるかは今回のデータからは判断できません。
しかし、現状得られている知見から今回のご質問に答えるならば
“フィナステリドによる前髪減少の原因はVEGFの減少によるもの”という説は有り得る
ということになります。
いまのところふわっとした回答しかできなくて申し訳ないのですが、
頭皮におけるVEGFや血管密度を評価した論文がもし出てきましたらより確かなことが言えると思うので、
今後も定期的に論文のチェックはしていきたいと思います(`・ω・´)ゞ
以上になります。
こすけさんご質問ありがとうございました!
フカセさま。こんばんは。はじめてコメントさせていただきます、グレープバインといいます。よろしくお願いします。
さて、以前よりプロペシアやザガーロの服用を検討していて、1ヶ月前くらいに実際にクリニックに行って、ザガーロをもらったものの、数日で服用を一旦止めています。
それは、ザガーロやプロペシアまたは後発品を飲んだことで逆に前髪をもっていかれたという書き込みを少なからず見るからです。これに対してネットでは、初期脱毛であるとか、短い期間で止めたからといったコメントをよく見るのですが、半年、1年、2年程度飲まれた方も少なくないように感じます。それもクリニック処方で。
偽物リスクも下がりますし、何故なんだろう?私の疑問に明確に応えてくれたのがフカセさんでした。ゴールデンウィークにこのページや関連ページにかなりアクセスがなかったでしょうか。私です(笑)
そこで、フカセさんに改めてお聞きするのですが、前髪をもっていかれる、あるいは細毛化する方は少なくないように感じますか?
私は、3割くらいは該当するように思うのですが…
また、私の場合M字以外は今のところ問題が全くないのですが、ミノタブのみ飲むという選択肢はどうでしょうか?
最後に、今は何もしないのも座して死を待つようなものなので、2週間前より亜鉛サプリとノコギリヤシサプリを服用しています。今のところ、特に変化は感じないのですが、もしかするとノコギリヤシにも前髪が無くなったり、細毛化のリスクがあるのでしょうか?
質問ばかりですみません。お時間の取れます時に、どうぞよろしくお願いします。
グレープバインさん
コメントありがとうございます!
また、当ブログを参考にして頂きましてありがとうございます(`・ω・´)ゞ
さて、フィナステリド系の医薬品で前髪をもっていかれる割合ですが、私自信は多くのAGA患者の治療状況を見られるような医師のような立場にいないため、残念ながらあまり信憑性のある情報はもっておりません^^;
ただ、あくまでネットの口コミなどを見ている限りは、この現象は若年層で起こることが多く、若年層の服用者の内1~2割ぐらいは前髪減少に悩まされていてもおかしくはないかなという印象です。
ミノタブのみの服用につきましては、特にM字のみという方にはアリだと思います。
また、ミノタブに加えて現在服用されている亜鉛サプリやノコギリヤシサプリを組み合わせるのも良いかと思います。
なお、ノコギリヤシエキスについても作用メカニズムとしてはフィナステリドとほぼ同様なため、前髪がなくなるという現象も同様に起こってもおかしくはないはずです。
しかし、実際のところはノコギリヤシでそのような現象が起こった例は見かけたことがないため、あまりその点は心配しなくてよいかもしれません!
(これは単純にノコギリヤシエキスの作用がフィナステリドよりマイルドなためかもしれません。)
フカセさん。お忙しい中、ありがとうございました。
そうですか。フカセさんのお考えですと、1割2割位の割合で該当者がいるような感じなのですね。
この1割2割を高いと感じるか低いと感じるかは、人それぞれですが、決して低い割合ではなさそうですね。
実際にAGA治療で患者と向き合うクリニックは、たくさんの情報を持っていると思うのですが、一部のクリニック(と信じたい)ではあえて不都合な情報を積極的に開示しないのかもしれませんね。
それにしても、EDもそうですが血管密度の低下が影響を与えているというフカセさんの考え方は、とても説得力があると思います。
さて、ノコギリヤシと亜鉛サプリを飲み始めて1ヶ月経ちましたが、効果はよく分からないです。が、左M字のところから離島のように毛が1本、生え際中央付近から、これまた離島のように1本、毛が生えました。私は神経質なほうで、生え際部分の観察は日頃からしていますが、生えていた記憶がありません。ただの偶然の可能性も高いですが、もしも仮にノコギリヤシで何らかのプラスの効果があったとしたら、プロペシアやザガーロに切り替えたら、ひょっとしたらという思いも出てきています。
フカセさん。質問ばかりで恐縮ですが、ゴールデンウィークの頃は、まずはミノタブオンリーでスタートしようと考えていたのですが、このところネットで情報に触れていると、ミノタブだけは止めたほうがよい、もし飲むとしてもそれは最終手段である。ミノタブを飲むと、長いスパンで考えるとつるっぱげになると。何故なら、ミノタブは薄毛部位も正常部位も薬の影響で生えて抜けてを短期間に何度も繰り返す。一方、一つの毛根から生え代わる回数には限度があるから、最後は取り返しのつかないことになるというものです。
お時間の取れます時に、フカセさんのお考えや情報等をお知らせ下さいますと幸いです。
コメントありがとうございました